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スフィンクスとピラミッド
今回は、古代エジプトシリーズ。
ピラミッドやスフィンクス、ツタンカーメンにミイラや神殿など、数々の世界遺産で有名な古代エジプト文明。
ハイライトは、王朝時代ですが、その起源は、紀元前7050年前まで遡る新石器時代だとされています。
古代エジプト文明の起源については、こちら👇
今回は、第1王朝時代に入っていきます。
エジプト全土を統一した最初の王であり、第一王朝の創設者でもあるナルメル王についてです。
有名な「ナルメルのパレット」の解説からナルメル王に迫ります!
ナルメルのパレット(画像:Wikimediaより)
今まで、知られてきたのは、先王朝時代の後に、第1王朝が始まるという歴史。
ですが、実は、第0王朝期があった!という記事も、前回書いています。
気になる方は、こちらをどうぞ👇
第1王朝(紀元前3200年頃)の王として有名なのが、ナルメル王ですね。
彼は、エジプト全土を統一した最初の王であり、第1王朝の創設者でもあります。
最も重要な業績は、以下の3つ。
①全エジプトを統一することに成功
②全エジプトの首都(メンフィス)を設立
③歴史上において最初の中央政府を設立
それでは、有名な「ナルメルのパレット」について見ていきましょう。
ナルメルのパレットは、古代エジプト文明において、とても有名な遺物の一つです。
このパレットは、後世まで続く王朝時代の美術の主要な特徴を既にほぼ取り入れており、王朝時代の美術様式がほぼ完成されたことを表す好例なんだとか。
このパレットの重要性は、以下の3つ。
①ナルメルが王朝時代の最初の王、上下エジプトを統一した王であることを証明する遺物であること
②全エジプト統一時に武力を使ったことを証明していること
③王朝時代の図像表現を確立したこと
では、順番にみていきましょう。
(※ 以下、画像は全てWikimediaより引用)
このパレットは、1898年、イギリスの考古学者 James E. Quibell 氏と Frederick W. Green 氏によって、ヒエラコンポリスにあるホルス神殿で発見されました。
パレットとは化粧用のパレットのことで、材質はシルト岩で、長辺(縦)は、63cm。
神殿への奉納用のため、大きく作られているのが特徴なんだとか。
二匹の首の長い獣(けもの)が円を描いている所にあるくぼみが、化粧用の顔料を磨りつぶす箇所であることから、こちらが表面なんだそう。
次に、裏面を見ていきましょう。まずは、上段。
上の左右の出張っている箇所の図像を見てみると…
角が生えた人面は、バト神かハトホル神だと考えられています。
両者とも先史時代から崇められていた雌牛の神ですね。
この間にある四角の図像は王名を表しています。
四角いかこいは、セレクと呼ばれ、王宮を表しており、この中に描かれているのが王名となるそうです。
この中に書かれている図像は、実はヒエログリフなんだとか。
上がナマズ、下が大工道具のノミを表しているんだそう。
これらはそれぞれ「ナル」「メル」と読めるため、この王はナルメルと呼ばれるようになったんだとか。
次に、中段を見て見ましょう。
中央に大きく描かれている人物がナルメル王です。
王がかぶっているボーリングのピンのようなものは白冠と呼ばれ、上エジプトを象徴するものです。
右手に持っているのがメイス(棍棒)。
メイスの先の部分が頭(メイスヘッド)です。
着用している短い腰巻きと「雄牛の尾」と呼ばれるアクセサリーは王の儀礼用の装いで、これらは、のちに王の象徴になるものだそう。
付け髭も同様に王の象徴になっていくそうです。
ナルメルに髪を鷲掴みにされている人物は、下エジプトの支配者(デルタかファイユーム地方の支配者)であったという説があるんだとか。
外国人という説もあるんですが、右上の図像が下エジプト説を補強しているといいます。
右上の図像の鳥は、ハヤブサの神・ホルスで(おそらく上エジプトの)王を表し、下の6つのえのき茸のようなものはパピルスで、それが育つ湿地帯、つまり下エジプトを表しているんだとか。
頭部を表す図像は、上エジプトの王が下エジプトを武力によって征服したことを表しているんだそう。
ナルメルに髪を鷲掴みにされている人物の右にあるヒエログリフは「銛」と「池」だそうですが、それが何を表しているかは、残念ながら明確にはなっていないようです。
ナルメルの後ろの人物は、王のサンダルと水差しを持っています。
サンダルもまた、高貴な人物の象徴とされているそう。
(水差しについては、聖水あるいは儀式用のワインがいれられていたという考古学者もいるらしい!)
この人物が首からぶら下げているモノは、円筒印章と考えられているそうです。
このことから、彼がかなり重要な人物であることが分かるんですって。
さらに、頭上に書かれているロゼット文様は王権を象徴する図像の1つで、この人物は王子のような王に近い存在だと考えられているそうです。
最後に、下段を見てみましょう。
逃げ惑う二人の人物が描かれています。
髪型から、アジア人と考えられているのですが、それぞれの顔の左側に異なる絵文字が書かれています。
左はパレスチナの都市の周壁、右はトランスヨルダンのカイトと呼ばれる放牧した羊などを追い込む施設を表しているという説もあるようですが、明確にはなっていないそう。
いずれにしても、ナルメルは、アジアまで影響力を及ぼしていたということがわかります。
この地域で発掘されるナルメルの名前が刻まれた土器などの遺物からも確認されているようです。
それでは、表面をみていきましょう。
最上部は、裏面と同じですので、省略。
2段目をみてみましょう。
舞台のような場面が描かれています。
一番大きく描かれているのがナルメルです。
顔の前にナルメルのヒエログリフがあります。
着用している腰巻きと尻尾のようなアクセサリーは、ウラ面と同様に儀礼用の装いなんだとか。
ここでは冠が違うのがわかりますか?
これは赤冠と呼ばれ、下エジプトを象徴するものだそう。
つまり、ここでは下エジプトの王として描かれているのだといいます。
右端の2列に横になっている10体は、ナルメルが倒した敵の死体だそう。
それぞれの股の間には、斬られた首が置かれています。
左端にはウラ面でも描かれているサンダルを持つ人物がいます。
この人物の上に書かれているマークについては、残念ながら明確には分かっていないんだとか。
ナルメルの前に、豹柄の服を着た人物がいますね。
彼が首からぶら下げているものは筆記用具です。
頭上のヒエログリフは、チェトあるいはチャティと読むそうです。
これは宰相を表しているんだとか。
宰相の前に描かれている小さな4人の人物が持っているのは、旗竿で、この旗竿は王朝に属する町または部族の旗です。
つまり、ナルメルに従属する集団がその場にいたことを表しているんだとか。
3段目をみてみましょう。
首の長い豹の顔を持つ獣(けもの)が首を交差させる図像がありますね。
このような図像は、西アジアでよく見られるものなんだそう。
つまり、この表現は、西アジアからの影響を受けているといいます。
4段目をみてみましょう。
王の化身である雄牛が、アジア人(リビア人?)を踏みつけ、町の周壁を壊している様子なんだとか。
このパレットは、南のナルメル王が北の民を軍事力で制圧したことを示す資料として、古くから解釈されてきたそう。
しかし、近年、その解釈を巡って、賛否が分かれているんだとか。
これまで通り、歴史的記述とするドレイヤー氏に対して、ケーラー氏は、権力と秩序を保つ王の役割を示す概念的な表現であるとしているそう。
どちらの意見も資料分析を通して得たもので、判断は難しいそうです。
以上、今回は「ナルメルのパレット」についてでした!
必要とする方の参考になれば幸いです。
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